鉄が必要とされた戦国時代、出雲の山奥に千年錆びないといわれる刀を生みだす幻の鋼(はがね)を作る、たたら村があった。
ある時、その村は鋼を目当てにする山賊たちに襲撃される。その惨状の中、呆然と立ち尽くす少年。
この物語の主人公、村で唯一“たたら”技術を継承する村下(むらげ)の長男、伍介(ごすけ)である。
伍介は村下の子として、先祖から受け継がれた製鉄技術“たたら吹き”を守っていくという宿命を背負っていた。
時は流れ、伍介は立派な青年に成長していた。
幼なじみの新平と共に武術の鍛錬に余念がない伍介。
村を守るためには武術で強くなるしかないと訓練を続ける。
しかし、村下の息子としてやるべきことは“たたら吹き”の技術の鍛錬であり、その技を極めること。
村下である父は伍介を咎めることも無く、自らの鉄作りを見せて背中で教えていた。ある日、秘伝の技術に目を付けた商人が“たたら”の村を訪れる。
村を強くして守りたいという伍介の思いを利用して、秘伝の技術を我が物にしようとする商人の思惑に嵌められた伍介と村の若者たち。
伍介は、村を出て侍になる事を決意する。
果たして武力を増強することが村を守ることになるのか。定めに抗い、惑い、もがきながら伍介が辿りつく道とは。
戦乱の世が伍介と“たたら”の村を飲み込んでいく・・・