【二日月】

――3曲めの『二日月』は、数あるデモ曲のなかから、なぜこのメロディを選ばれたのでしょうか?
「もともとサーフロックがすごく好きで、自分に合っているなと感じていました。この曲もサーフロックテイストで、聴いていてすごく心地よかったんです」

――『with...』とは真逆で、『二日月』は未来というよりも、過去や今に捉われた歌詞になっています。恋愛が終わってしまったときの、男性の心が表現されていますよね。
「恋愛における陰と陽の、陰の部分を表現した楽曲。それに、サーフロックにあえてネガティヴで切ない歌詞を乗せることで、新しさも感じていただけるのではないかと思いました」

――『二日月』というタイトルもまた、すごく印象的ですね。
「二日月って、見えるか見えないかくらい極細の月のこと。こないだ、たまたま空を見上げたら二日月が出ていて、思わず写真を撮ってしまいました(笑)」

――どのように恋愛を二日月に例えたのでしょう?
「今にも消えそうな二日月の光を、恋愛の陰の部分に投影してみたんです。恋愛って、始まりもあれば終わりもある。もちろん、終わらないことがいちばんだと願ってはいても、僕を含め、皆さんにも終わってしまった恋愛があると思うんです」

――歌詞からは、突如別れが訪れたような印象を受けました。
「例えば浮気されたり、恋人が自分の知らないところでまったく違う顔を見せているのを目の当たりにしてしまったときって、一瞬にして昨日まで自分が愛していた恋人の姿・形が自分のなかから消えてしまう。昨日まで知っていた恋人の姿は、どこを探してもいないというか……。生き別れではない、もっとつらい経験をされた方もいらっしゃると思いますが……。そういう想いって、少なからず誰しもが経験したことがあると思うんです。絶望を感じて、生きる気力すらなくしてしまうくらい落ち込んで、傷ついたと思う。それに、傷つかずに恋愛してきた人って、なかなかいないとも思うんですよね」

――“残されたリングには僕と別の傷跡”という歌詞も、すごく深いですよね。
「個人的にも好きな歌詞ですね。“心”をペアリングに例えてみました。ふたりで同じ方向を向いて歩んでいると思っていたけれど、気づいたころには別々の方向を向いていて。そこに気づいたときにはもう遅くて……。気づくのが遅かった自分への不甲斐なさ、恋人を寂しくさせてしまった自分への不甲斐なさに苛まれているイメージです。恋人との別れに、どちらかだけが悪いっていうことはないと思うんですよね。男としてのカッコよさではなく、カッコ悪くて女々しい部分をあえて唄ってみました」

――ラストでは、たとえ届かなくても元恋人の幸せを願っています。そこでさらに、切なさが募りますよね。
「いくら傷ついたとしても、時間が解決してくれることもありますし、一度好きになった人を恨んでしまったら意味がない。それに、その経験がまた人として成長させてくれると思うんです。恋愛ってやっぱり難しくて、ハッピーエンドで終わる恋愛ばかりではない。失恋して心に傷を負ったときって、友人などに相談して共感してもらえるだけで、心が少し救われたりしませんか?だから、例えば忘れられない過去の恋愛や最近失恋してしまった方などの心にこの曲が寄り添って共感することで、皆さんの心が救われることにつながったらうれしいです。『with...』と『二日月』。どちらも恋愛のことを描いた歌詞ですが、陰と陽……完全に真逆の世界観になっています」